ベトナムでUGCマーケが爆発的に効く理由|口コミ文化と日系企業がやりがちな失敗(2026年版)

ベトナムでSNS広告に予算を入れているのに、思ったほど売上につながらない。そう相談してくる日系企業は少なくありません。広告の作り込みが足りないのだろうか、と悩む方が多いのですが、原因はたいてい別のところにあります。

ベトナムの消費者は、企業がつくった広告よりも、一般の人が投稿したレビューを見て買うかどうかを決めます。つまり、企業が自分で広告を作るより、ユーザーに投稿してもらうほうが効くのです。これがUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。

この記事では、ベトナムで日々SNSを運用し、日系企業のマーケティングを支援している筆者が、ベトナムでUGCがなぜここまで効くのか、どんなカテゴリで爆発するのか、そして日系企業がやりがちな失敗を、現地の実感からお伝えします。数値は特記のない限り2026年6月時点のものです。

SNSはUGCで動いている|広告で知り、レビューで買う

まず、ベトナムのSNSがどう動いているかです。筆者のフィードに流れてくる投稿は、9割以上がユーザーによるレビュー動画で、企業広告ではありません。そして筆者自身も、実際に買うかどうかは、いくつものユーザーレビューを見てから決めています。

広告が無意味だという話ではありません。広告は「その商品の存在を知る」ために重要な役割を果たします。ただ、買うかどうかの最後のひと押しをするのは、リアルで共感でき、信頼できるユーザーの投稿です。広告で知り、レビューで買う。この2段構えが、ベトナムでは日本以上にはっきりしています。

裏付けとなる調査もあります。ベトナム市場の各種レポートでは、78%がオンラインレビューは商品選択に大きく影響すると回答しています。日系企業が広告のクリエイティブだけを磨いても頭打ちになるのは、購買の決め手がそもそも別の場所にあるからです。

なぜ自発的に投稿するのか|見せることは自己表現になった

UGCを活かすには、なぜ人がわざわざ投稿するのかを理解する必要があります。ベトナムでは「見せる(khoe)」ことが、もう自慢というネガティブな意味ではなく、自己表現として受け入れられています。

筆者自身も、飲食店のレビューや子育てを通じて見つけた体験をSNSに投稿することがあります。その理由は大きく3つあります。1つ目は、自分の経験や知識をほかの人にも共有したいから。2つ目は、写真とともに思い出を記録しておきたいから。そして3つ目は、アフィリエイトのリンクを通じて、少額ながら収入を得られる点です。

ここで日系企業が理解しておきたいのは、ユーザーには自発的に投稿する理由があるという点です。投稿は「企業に頼まれたから」ではなく、投稿する本人にとっての得(承認、記録、収入、仲間への貢献)があるから起きます。だからこそ、企業に必要なのは、投稿を促すことだけではなく、ユーザーが自然と「誰かに紹介したい」「SNSで共有したい」と思える体験やきっかけをつくることです。

爆発するカテゴリ|美容が最も強く、B2Bは自然発生しにくい

UGCはどのカテゴリでも同じように効くわけではありません。カテゴリごとの向き不向きを押さえておく必要があります。

最も強いのは美容です。安価なものから高級品まで商品の幅が広く、KOL(インフルエンサー)も価格帯ごとに層が分かれています。ベトナム人の外見や美容、健康への関心は年々高まっており、新商品も次々に出てきています。美容のUGC動画は見る人にFOMO(見逃したくないという焦り)を生み、好奇心をかき立てます。実際、商品そのものより、KOLへの信頼や応援を理由に買う人も多いのが実態です。

美容に続くのが飲食、カフェ、ファッションです。写真や短尺動画にしやすく、投稿の動機が生まれやすいカテゴリです。逆に、B2B、保険、金融といったカテゴリは自然発生的なUGCが起きにくく、一般論的な情報にとどまりがちです。ここは無理にUGCを狙うより、専門性のある解説コンテンツで信頼を積むほうが効果的です。

投稿したくなる仕掛け|映えと「自分らしさ」を設計する

では、人はどんなときに「思わず投稿したくなる」のか。筆者の実感から述べると、見た目が美しい、あるいは高級感やブランド名を感じさせる商品が投稿されやすい傾向にあります。それは、自分で購入したもの、あるいは誰かから贈られたものも同様です。SNSへの投稿は、単に商品や体験を紹介するだけでなく、自分のライフスタイルや価値観を表現する一つの手段でもあります。そのため、人は日常の中から、特に魅力的に見えるものや誰かに見せたいと思うものを選んで投稿するのです。

筆者が実際に自身のSNSへ投稿した例を挙げます。金箔をあしらったおまかせ料理の体験、美容インフルエンサーHannah Olalaのイベントでもらったコスメの開封動画、ホテルのインフィニティプールからの朝日の風景などです。そしていずれも、思わず「誰かに見せたい」と感じる魅力がありました。

このような例から、企業側はより慎重にユーザーの心理を汲み取り、商品や体験を提供する必要があると考えられます。例えば、写真を撮りたくなる場所(góc sống ảo、いわゆる映えスポット)を店内に設計する、ブランドの世界観を取り入れたテイクアウトカップを用意する、等が挙げられます。大事なのは、投稿をユーザーにお願いするのではなく、自然と投稿したくなる体験や環境をつくることです。

バズるUGCの型|リアルさが命

ユーザーに投稿してもらうだけでなく、どのような投稿が拡散されやすいのかを理解しておくことも重要です。ここでは、ベトナムのTikTokでもよく見られる代表的な投稿パターンを紹介します。

  • #TikTokMadeMeBuyIt(TikTokを見て買ってみた)
    TikTokがきっかけで購入した商品を紹介する投稿です。「最初は必要ないと思っていたけれど、使ってみたら想像以上によかった」といった、購入前後の印象の変化を伝える内容が特徴です。
  • Things I regret not buying sooner(もっと早く買えばよかった)
    実際に使ってみて、その便利さや良さに気づいた商品を紹介する投稿です。「もっと早く知りたかった」と思わせることで、視聴者の購買意欲を刺激します。
  • POV(ある状況を疑似体験する動画)
    聴者が共感しやすい日常の場面や悩みを再現する投稿です。例えば、よくある困りごとを取り上げ、その解決策として商品を紹介します。視聴者が自分のこととして捉えやすいのが特徴です。
  • 30秒~60秒のショートレビュー
    商品を実際に使う様子を見せながら、良い点だけでなく気になる点も紹介し、最後に購入する価値があるかを伝える投稿です。筆者自身も、商品を購入する前によく参考にしている形式です。

これらに共通するのは、企業からの一方的な宣伝ではなく、実際に商品を使った人の感想やアドバイスとして受け取られやすいことです。過度に演出された動画よりも、実際の体験が自然に伝わる投稿の方が、視聴者の共感や信頼につながりやすくなります。

企業のUGC活用|うまい例と、素材で差がつく理由

ブランドがUGCをうまく活用できるかどうかは、ユーザーが思わず誰かに紹介したくなる「素材」を持っているかが重要です。その好例としてベトナム発のヴィーガンコスメブランド「Cocoon」を紹介します。

Cocoonは、主にユーザーやKOC(一般消費者に近い立場で商品を紹介する小規模インフルエンサー)によるレビューが、商品の認知を広げる役割を果たしています。ダクラク産コーヒーを使った角質ケア商品や冬瓜のセラムなどは、テクスチャーや香り、実際の使用感、日常のスキンケアへの取り入れ方など、さまざまな切り口で紹介されています。こうした投稿は、単なる商品紹介ではなく、実際に使った人からのアドバイスとして受け取られやすいのが特徴です。

Cocoonの強みは、ユーザーが自分の言葉で語れるブランドの特徴があることです。動物実験を行わない方針や、ヴィーガンへのこだわりに加え、ダクラク産のコーヒー、冬瓜、フンイエン産のウコンといったベトナム由来の原料も商品の魅力を伝えるリソースになっています。こうした特徴があるからこそ、投稿者は決められた宣言文句を繰り返すのではなく、自分が感じた魅力や使用体験をもとに商品を紹介することができます。

日系企業がやりがちな失敗|UGCを「統制された広告」にしてしまう

最後に、日系企業がUGCで陥りがちな失敗についてお伝えします。

日系企業の中には、UGCをハッシュタグキャンペーンやリポスト企画、ギフト配布といった販促施策としてとらえているケースがあります。しかし、こうした方法では投稿数は増やせても、ユーザーの共感や自然な拡散につながらないことがあります。

その背景の一つに、日本企業ならではの慎重な姿勢や炎上を防ぐための厳格なリスク管理が考えられます。もちろんブランドイメージを守ることは大切です。しかし、投稿内容を細かく管理しすぎると、UGCの強みであるリアルな使用感や投稿者らしさが失われてしまいます。

具体的には次のような失敗が挙げられます。

  • 投稿ルールが厳しすぎる
    背景に他社ロゴを入れない、他人を写り込ませない、照明や構図を整えるといった細かい条件を多く設けてしまうケース。必要なルールは守りつつも、過度な指定は投稿者の自由な表現を妨げます。
  • 企業目線のハッシュタグを使わせる
    企業のスローガンをそのまま長いハッシュタグにしたり、普段のSNSでは使わないような言葉を指定したりするケース。投稿が宣伝らしく見えてしまい、ユーザーの自然な発信から浮いてしまうことがあります。
  • 商品を褒めることだけを求める
    ギフトと引き換えにm商品をもって笑顔で撮影し、良い点だけを紹介してもらうケース。同じような投稿が並ぶと、実際の使用感が伝わりにくくなり、広告色が強まってしまいます。

では、どうすればよいのでしょうか。

ヒントになるのは、先ほど紹介したCocoonのように、ユーザー自身が語りたくなる商品やブランドの魅力を提供することです。

企業が一方的に投稿内容を決めるのではなく、KOCやマイクロインフルエンサーが自分の言葉で発信できる余地を残す。商品の良い点だけでなく、実際に使って感じたことを率直に伝えてもらう。そうすることで、投稿を見る人にとっても参考になるレビューが生まれやすくなります。

大切なのは、UGCを企業が管理する広告として考えるのではなく、ユーザーのリアルな体験を共有してもらう仕組みとして捉えることです。

ベトナム市場でUGCを活用するうえでは、投稿数を増やすことだけに目を向けず、一つひとつの投稿がどれだけ自然で、見る人の信頼や共感を得られるかを意識することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. UGCとインフルエンサーマーケティングは何が違うのか。

インフルエンサーは影響力のある個人に発信を依頼する施策で、UGCは一般ユーザーが自発的に作る投稿全般を指します。ベトナムではKOC(一般寄りの小規模インフルエンサー)が両者の中間として機能し、リアルさと拡散力を兼ね備えています。

Q. ベトナムでUGCが効きやすいカテゴリは。

美容が最も強く、飲食、カフェ、ファッションが続きます。B2Bや保険、金融は自然発生的なUGCが起きにくいため、解説コンテンツで信頼を積むほうが向いています。

Q. UGCを増やすために企業は何をすればよいか。

投稿を強制するのではなく、投稿したくなる理由を用意します。映えスポットの設計、そして他人が語りたくなる素材(商品やこだわりのストーリー)を持つことが有効です。

Q. 日系企業が気をつけるべき点は。

長い規約やスローガン的なハッシュタグの強制をやめ、本音のレビューを許容することです。褒めすぎる投稿はベトナムでは逆に信頼されにくい場合があります。

VWCでは、ベトナム市場に合わせたUGCやKOC施策の設計から、SNS運用の実行までを日本語とベトナム語で一気通貫に支援しています。ベトナムでの口コミづくりでお悩みなら、VWCにご相談ください。

VWCへのお問い合わせ・相談はこちらから!

Nguyen Thi Thao Ngoc

ゴック グエン。ホーチミン市経済大学(UEH)にて国際ビジネスを専攻。大学卒業後、ウェスタンシドニー大学にてMBA取得。Shopee事業開発幹部、Lotte E-commerceマーチャンダイジングエグゼクティブを経て、LAZADAにてブランドマネジメント・データ分析・プロジェクト管理など5年間従事。ベトナム国内大手ECプラットフォーム3社での業務経験を持つ。