「ベトナムでSNSマーケティングを始めたいが、どの媒体に出せばいいのか分からない」。筆者がベトナム進出企業のご担当者から最もよく受ける相談のひとつです。日本のLINEやInstagramの感覚をそのまま持ち込もうとして、最初の一歩で戸惑われる方が少なくありません。
ベトナムのSNSは、利用率も使われ方も日本とは大きく異なる構造になっているためです。Facebookは近況報告の場ではなく巨大なコマース基盤、連絡はLINEではなくZalo、ECはモールよりTikTok。日本での感覚のままでは、予算の置きどころを見誤りやすくなります。
本記事では、ベトナム進出企業のマーケ担当・経営者の方に向けて、次の3点を整理します。
筆者はホーチミンで、日系企業のマーケティングを支援しています。ベトナムで暮らし、ここで紹介するSNSを自分でも毎日使い、仕事でも運用してきました。本記事は、その実体験と最新の公開データの両面からまとめています。数値はすべて出典付きで示します。
※データは2026年6月時点です。SNSの利用率・シェアは年単位で変動するため、判断時は出典の最新版をご確認ください。

まず全体像です。ベトナムのSNS利用者は、2025年1月時点で約7,620万人。総人口の75.2%にあたり、インターネット利用者の9割以上が日常的にSNSを使っています。日本(SNS利用率8割前後)と比べても、「ネットを使う=SNSを使う」がほぼ一致している国です。
主要5媒体の規模とシェアは次の通りです。
| 媒体 | 利用者数・規模 | 主流の用途 |
|---|---|---|
| 最大手(2025年上半期で利用率トップ) | コマース・グループ・連絡(Messenger) | |
| Zalo | 国内No.1メッセージアプリ。85%が利用 | 仕事・家族・行政・決済の生活インフラ |
| TikTok | 18歳以上で約7,610万人(2025年末) | ショート動画・ニュース・TikTok Shop |
| YouTube | 約6,210万人(2025年末) | 長尺動画・学習・レビュー |
| 普及率は約12%と限定的 | 美容・ファッション、Z/Y世代中心 |
出典:DataReportal Digital Vietnam / Statista(Vietnam social media platforms)
全体像を一言でまとめると、ベトナムのSNSはFacebook・Zalo・TikTokの三強で動いています。InstagramやYouTubeは「使う人は使う」ものの、マーケティングの主戦場ではありません。なぜこの3つなのかを、筆者の実際の使い方を交えながら1媒体ずつ見ていきます。

ベトナムのFacebookは、日本人がイメージする「近況報告のSNS」ではありません。買い物・情報収集・コミュニティが動く巨大プラットフォームとして機能しています。
筆者がFacebookで実際にすることは、ブランド情報の検索、買い物、そしてグループへの参加です。特徴的なのがグループの使い方で、参加するグループはその時々のニーズや年代によって変わります。例えば、子育てと離乳食、個人・家族の家計管理、料理と家事、フリーランスの仕事や採用市場の情報。それ以外に、友人とのつながりを保つためにも使っています。
ここが日本との大きな違いです。日本では特定テーマの情報を専門サイトやXで探しますが、ベトナムでは「離乳食の悩み」も「フリーランスの仕事探し」もFacebookグループの中で完結しています。企業にとって、ターゲット層が集まるグループは、そのまま見込み顧客の母集団になります。
コマース面でも強く、Facebookはライブコマースの主戦場の1つで、Messengerは問い合わせ・接客の中核チャネルです。「投稿を見て、コメントで質問して、Messengerで注文する」という購買フローが普通に成立します。
ただし変化も感じています。アルゴリズムがこの1年で変わって検索しづらくなり、Messengerも以前ほどメッセージの優先チャネルではなくなりました。連絡手段としてのFacebookは、次に説明するZaloに主役を譲りつつあります。

日本企業が最も見落とすのがZaloです。「ベトナム版LINEでしょう」で片付けると、本質を取り逃します。Zaloは連絡アプリの枠を超えて、仕事・行政・決済までを担う生活インフラになっています。
メッセージアプリの利用意向調査(Decision Lab Connected Consumer Q4 2025)では、Zaloが56%で首位。Facebook(23%)やMessenger(15%)を大きく引き離しています。世代別に見ても、Z世代・Y世代・X世代の全世代でZaloが首位で、2020年以降18四半期連続のトップです。利用率では27歳以上で99%、26歳以下でも96%に達します(出典: Vietnam.vn(Decision Lab Connected Consumer))。
筆者自身の使い方も、それを端的に表しています。Zaloの利用は8割が仕事、2割が家族や友人です。Zaloがないと顧客とやり取りできないのが一番困ります。Zaloは誰もが持っているプラットフォームで、WhatsAppやLINEとは違い「相手が使っていない」ことがありません。仕事の下書きデータを自分宛てに保存するのにも便利で、1日中開いているアプリです。
「誰もが持っている」という普及の深さこそがZaloの強みです。ビジネスで連絡先を交換するとき、日本のLINEのように「持っている人・いない人」がいません。全員が持っている前提で商談が進みます。さらにZaloは行政手続き・自治体の災害警報・銀行・決済まで公式アカウント(OA)やミニアプリで取り込んでおり、別アプリを開かずに生活が回ります。
日本企業が陥りやすいのは、日本のLINE感覚で「Zaloは連絡アプリだから後回し」と考え、現地顧客との連絡線そのものを細くしてしまうことです。ベトナムでBtoC・BtoBを問わず顧客と直接やり取りするなら、Zaloの公式アカウント(Zalo OA)は事実上の必須インフラです。日本のLINE公式アカウントと同じ優先度で、予算と運用体制を組むことをおすすめします。

ベトナムのTikTokは「若者の暇つぶし」ではありません。EC市場を塗り替えている購買エンジンです。
TikTok Shopの2025年上半期の流通総額(GMV)は約35.7億ドル(約93兆VND)で、前年同期比プラス148%という急成長を見せました。EC市場でのシェアは約42%に達し、Shopeeを猛追しています(2025年第3四半期はShopee56%・TikTok Shop41%)。利用時間も全SNSで最長クラスです。
| 指標 | 数値(2025年) |
|---|---|
| TikTok ShopのGMV(上半期) | 約35.7億ドル(前年比+148%) |
| EC市場シェア | 約42%(上半期) |
| 主力カテゴリ | ファッション・美容 |
出典:The Investor(EC売上) / Statista(TikTok Shop Vietnam)
なぜこれほど売れるのか。筆者がTikTok Shopで買い物をするときの行動に、その答えがあります。買い方には2つのパターンがあります。
1つ目は、買う目的があるとき。商品を探して価格を比較して買います(日用品や化粧品など)。このときは他のECより安いことが最重要で、TikTok Shopが最安のときだけ買います。
2つ目は、買う目的がないとき。動画やライブを見て、いいなと思い価格も手頃なら買います(ファッション、おもちゃ、子ども向けの本など)。この場合は動画・ライブでの伝え方が決定的です。その商品の強みと他商品の弱みを直接見せてくれるので購買決定が速く、価格は二の次になります。
この2つの行動は、そのまま施策に落とせます。「目的買い」では価格訴求、「衝動買い」ではコンテンツ訴求という二層構造です。日用品・化粧品なら最安値を取りにいく価格設計、ファッション・雑貨ならライブやショート動画で「強み・弱みの比較」を見せる演出と、同じTikTok Shopでも商品カテゴリで打ち手が変わります。自社の商材がどちらの買われ方をするのかを見極めることが、最初の一歩になります。

三強の次に来る媒体は、役割を理解して「効く場面だけ」使うのが正解です。筆者が実際に使っている3媒体の評価を、そのまま紹介します。
特に注目してほしいのが、Threadsと「検索行動」の変化です。例えば筆者が1区で鰻丼を出す日本食レストランを探したいとき、Threadsで検索すれば多くの議論が出てきて、そこから自分のニーズに合う店を見つけられます。議論からの情報検索が、Facebookより簡単なのです。
ベトナムの若年層は、店探しや商品評価を「検索エンジン」ではなくSNS上の生の議論で行いはじめています。日本でも起きているSNSの検索化と同じ流れですが、ベトナムではThreadsという新興媒体が受け皿になっている点が独特です。口コミ・UGC施策を考えるなら、Threads上の会話は無視できません。

ここまでを踏まえ、日本人マーケターが特に誤解しやすい5点を整理します。
| 日本の常識 | ベトナムの実態 |
|---|---|
| 連絡はLINE | LINEはほぼ使われない。Zaloが国民インフラ |
| Zaloは「連絡アプリ」 | 仕事・行政・決済まで担う生活基盤 |
| Z世代の主役はInstagram | 主役はTikTokとFacebook。IGは美容/ファッション限定 |
| ECはモール(Shopee)中心 | TikTok Shopが42%。「見たら買う」が主流 |
| 情報は検索エンジンで探す | SNSグループ・Threadsの議論で探す |
特に陥りやすいのが、この表の上2つです。Zaloを「メッセージアプリだから後回し」と考えて顧客との連絡線を失う。日本の感覚で「若者=Instagram」と予算を寄せて、TikTokとFacebookという本丸を外す。そして「EC=モール」という固定観念のまま、商品を並べて待ってしまう。いずれも日本のSNS地図をそのまま持ち込んだことが原因です。
媒体選びは「全部やる」ではなく、目的から逆算して絞ります。ここまでの内容をもとに、媒体ごとの向き不向きを整理します。
予算が限られるなら、まずZalo(連絡)+FacebookまたはTikTok(集客)の2軸から始めるのが現実的でしょう。あれもこれもと手を広げるより、自社の顧客がいる場所に絞った方が、限られたリソースで結果が出やすくなります。

VWCは、ベトナムのSNS・SEO・マーケティング支援を、戦略設計から現場での実行まで一気通貫で行っています。「どのSNSに、どれだけ予算を振るべきか」で迷ったら、本記事を書いた筆者が、御社の商材と顧客像をもとに最初のご相談をお受けします。VWCに問い合わせる。
①ベトナムでSNSの規制・禁止はありますか?
ベトナムにはサイバーセキュリティ法があり、事業者にはデータ管理やコンテンツ対応の義務が課されています。一般の利用者がFacebook・TikTok・YouTubeを使うこと自体は日常的に行われていますが、企業として運用する際は、現地の法規制とプラットフォーム側のポリシーの両方を確認する必要があります。最新の規制動向は専門家への確認をおすすめします。
②ベトナムでLINEは使われていますか?
ほとんど使われていません。日本のLINEに相当する国民的メッセージアプリはZaloで、連絡先の交換からビジネス連絡までZaloが前提になります。日本からの進出時は、LINEではなくZaloでの体制構築が必要です。
③ベトナム語でSNSを運用する必要はありますか?
現地顧客を狙うなら、ベトナム語での運用が基本です。特にZalo OAやFacebookグループでの顧客対応はベトナム語が前提になります。在住日本人向けの商材であれば日本語運用も成立しますが、市場の大半はベトナム語話者です。
④ベトナムで今いちばん伸びているSNSは何ですか?
販売面ではTikTok(TikTok Shop)です。2025年上半期のGMVは前年比プラス148%、EC市場シェアは約42%まで拡大しています。情報収集・議論の場としては、Threadsが若年層を中心に台頭しています。
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