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【Vol.5】日本人客中心からベトナム客中心へ。ホーチミンの日本式居酒屋《炉端あん》がローカル客の予約を昨対比3倍に伸ばすまで

※本記事では、VWC支援先のクライアント様へインタビューした内容をご紹介します。

発信はしているのに、それが来店につながっている実感が持てない。SNSに投稿しても、KOL(インフルエンサー)に依頼しても、いいねやコメントはつくものの、店の売上がどう動いたのかが見えない。ホーチミンで店舗ビジネスをする日系企業の多くが、この「やってはいるが手応えがない」状態に陥っています。

日本で通じた勝ち方は、ベトナムではそのまま通用しないことが多くあります。それでも、誰に、どのチャネルで、いくら使えば来店に変わるのかを見極めないまま、単発の施策を重ねてしまう。つまずきの原因はここにあると言えます。

この記事では、ホーチミンで日本式居酒屋「炉端あん」を3店舗運営するオーイズミフーズ(Oizumi Foods Vietnam)の宮下純一代表に、VWCと組む前後で何が変わったのかを取材しました。客層がどう入れ替わったのか、焼肉の新業態での成果は、そして「外注」とは違うと感じている理由まで、経営者の言葉でお伝えします。

炉端あんという店

炉端あんは、2011年にホーチミンで創業した日本式居酒屋です。2019年にオーイズミフーズが運営を引き継ぎ、現在はホーチミン市内と近郊で3店舗を展開しています。

旗艦店であるレタントン店は、焼き物・鍋・ロール寿司を中心に、半個室も備えた店舗で、これまで日本人客を主な顧客としてきました。

2026年2月にオープンしたファンビッチャン店では、焼肉を取り入れた新しいスタイルの居酒屋に挑戦しています。また、ビンズンのHikari店は、香港・中国系のお客様がグループで利用する機会が多く、他の2店舗とは異なる独自のポジションを築いています。

宮下代表が大切にしているのは、「本格的な日本の味」と「誰でも気軽に利用できる店の間口の広さ」を両立することです。

「大衆すぎず、高級すぎない。日本人がつくる和食として美味しいのはもちろんですが、ベトナムのお客様から見ても、『日本人が監修している店だから安心して楽しめる。でも、肩肘張らずに気軽に行ける』。そんな雰囲気を大切にしています」

VWCに相談する前の課題

支援前の1年間は、売上の面で苦しい時期でした。自分たちで企画や新商品に取り組んでも、思うような反応が返ってこない。明確な手応えを感じられないまま、次の一手が定まらない状態が続いていたと言います。

「3年前は、FacebookなどのSNSも自分たちで運営していました。投稿に対する反応はあるものの、それが実際の集客や売上につながっているのか、効果を実感しづらかったですね。3店舗を運営するようになると、日々の業務も増えていきます。結果として、マーケティングに十分な時間やリソースを割くことが難しくなっていました」

とくにKOLは、手探りのままお金だけが出ていく典型でした。相場が分からず、割高な起用を単発で続けていたと振り返ります。

「そもそもKOLとは何かもよく分かっていなくて、返ってくるものが目に見えないので疑心暗鬼でした。世の中ではみんなFacebookでKOLを使っているのに、自分たちはできていないという焦りもありました」

やり方も、コネクションの作り方も、ノウハウも持っていない。そこに、日本語で課題を相談できる相手がいることの価値がありました。

VWCと組もうと思った理由

複数社から相見積もりを取ったうえで、依頼先を決めました。マーケティング施策は飲食店にとって重要な経営課題です。そのため、宮下代表が重視したのは、費用に対してどこまでの施策を実施してもらえるのかという「内容への納得感」と、これまでに日系飲食店を支援してきた実績でした。

特に決め手となったのが、自分たちがベンチマークとしていた飲食店の存在です。その店舗がVWCの支援によって集客や予約の入り方を変えているのを見て、「自分たちが目指している姿に近い」と感じたことが、依頼を後押ししました。

もう一つのポイントは、施策を複数の外注先に分散させず、一貫して任せられることでした。写真撮影からSNS運用、広告、KOL施策まで、それぞれを個別に依頼するのではなく、全体の流れを1社が把握したうえで動かしてもらえる。その点にも大きなメリットを感じました。

「毎回別の会社にスポットで頼むのではなく、全体が一連で流れている感覚があります。カメラマンも固定で、回を重ねるごとに、こちらの趣向やどのポイントで撮ればいいかを分かったうえでやってもらえる。写真をクリエイティブに仕上げるのは自分たちには時間がかかることなので、そこを任せられるのは大きいです」

客層が逆転したレタントン店

宮下代表が「一番大きな効果」と語るのが、旗艦店であるレタントン店の客層の変化です。

支援前は日本人客の割合が高く、ベトナム人を含むローカル層の集客にはまだ伸びしろがありました。そこに宮下代表は危機感を感じていました。

「日本人の市場が急激に大きくなるわけではありません。競合店が増えれば、限られた日本人客を各店舗で取り合うことになります。だからこそ、それまで弱かったベトナム人、特に若いローカル層を取り込んでいく必要があると考えていました」

施策を進めた結果、現在ではベトナム人客が日本人客を上回るまでに客層が変化しました。

「今はベトナム人のお客様が中心で、日本人のお客様が続き、観光客なども来ていただいています。日本人がつくる和食を日本人が美味しいと言うのは当たり前です。ベトナムのお客様に実際に来てもらい、日本食の魅力を知ってもらえたことが大きかったですね」

変化の兆しが見え始めたのは2025年末頃。そこから徐々に成果が安定し、直近数カ月では前年を上回る状況が続いています。変化は予約状況にも表れています。支援前と比べて予約数は約3倍と大幅に伸び、現在では、事前予約で席が埋まる日も珍しくありません。

焼肉の新業態で学んだこと

2026年2月、ファンビッチャンエリアに新店舗をオープンしました。

移転前の店舗では、デリバリーが伸びる一方で、店内集客に課題を抱えていました。そこで、店内集客の課題を解決できる新たな立地を探していたところ、焼肉設備が整った現在の物件と出会い、新店舗の出店を決めました。

今回の出店で重視したのは、「何を売りたいか」ではなく、「この場所で、お客様が何を求めているのか」という視点です。

ファンビッチャンという市場に合わせ、炉端・居酒屋という既存ブランドの強みをベースにしながら、焼肉も楽しめる店舗へと業態を再構築しました。

その結果、移転後の店内売上は移転前と比較して2倍以上まで伸長しました。さらに、移転によって懸念していたデリバリーについても、周辺コンドミニアムからの注文を取り込みながら、継続的に成長しています。

今回の出店で最も大きかった成果は、単純に売上が伸びたことだけではありません。

これまでの「新しい業態をつくる」という発想から、「その街とお客様に合わせて、既存ブランドの強みを再構築する」という考え方へ転換できたことです。

また、ファンビッチャンというエリア自体も変化しています。以前は日本人が集まる場所としてレタントンが中心でしたが、現在では「ファンビッチャンで食事をする」という選択肢も徐々に定着しつつあります。

だからこそ、店舗単体の売上だけを見るのではなく、街の変化、お客様の行動、デリバリー需要、そして既存ブランドの認知度を組み合わせて、店舗のあり方を考える必要があります。

別の軸で伸びるビンズン店

3店舗目のビンズンHikari店は、他の2店とは客層がまったく違います。また、現在のビンズンHikari店では、香港・中国系のお客様が中心となっており、比較的人数の多いグループでの利用が多く、客単価も高い傾向にあります。

「スタッフもお客様の名前をしっかり覚えて、接客で違いを出しています。まだ伸びしろはありますが、中国・台湾のお客様向けの限定メニューなど、この店だけの軸をきちんと作っていく必要があると考えています。

3店舗を同じやり方で回すのではなく、店ごとに役割と勝ち方を分ける。その設計を数字を見ながら一緒に詰められることが、伴走の実利になっています。」

KOLと広告が「効く」まで

かつて疑心暗鬼だったKOLは、続けるなかで見え方が変わりました。どれくらいのフォロワー数なら、どれくらいの金額で、どの程度の効果が見込めるのか。回数を重ねて提案を受けるうちに、相場観が身についていったと言います。

「反応がいい方を選んで絞れるようになりました。リスト化されてフォロワー数まで可視化されるので、自分たちからも提案できる。やり続けたからこそ見えてきた部分で、そこはすごく大きかった」

続けることは、思わぬ副産物も生みました。日頃の取り組みが外から見えるようになり、起用する側だった炉端あんに、逆にオファーが届くようになったのです。

「ふだんなら起用に10万円ほどかかる人気のKOLの側から、うちで撮りたいと打診が来ました。普段の取り組みを見ていただいたからだと思います」

KOLの効き方も、宮下代表なりに掴んでいます。動画が上がった直後にどっと来るというより、平均でならして遅れて積み上がっていく。狙って続けたのは、看板メニューを出し続けることでした。

「どの動画が上がっても、これを食べれば間違いないという安心感のメニューを継続的に上げていました。オムそばやすき焼きは、もういいよというくらい撮っています。おかげで、同じものを食べたい、あの席で食べたいという指名が出てくるようになりました」

レタントン店では、3階の窓際で撮った動画を見たお客様から、その席を予約したいという声まで出るようになりました。効果が一番大きく表れたのは夜で、記念日利用の予約が目に見えて増えています。

Facebook広告についても、続けることそのものに価値を感じています。

「力を入れたいときだけ投稿して、あとは何もしないという状態が続いていました。今はきちんと月の本数を合わせてもらえる。上げ続けることで、お客様に飽きられていないし、ちゃんと動いているというのがFacebookを見ていれば分かる。そこを担保してもらえているのは大きい」

「外注」ではなく、社内のマーケ部門のように

宮下代表が繰り返し口にしたのは、距離の近さです。

「クライアントとして扱われているというより、VWCに社内のマーケティング部門を担ってもらっているような感覚です。日々連絡を取りながら数字を確認し、現場で感じていることや得られた情報もこちらから共有する。単に外注しているという感覚があまりないんです。

返信も早いですし、課題が出てきたときもすぐに対応してもらえる。現場の情報を共有して、数字を見て、次の施策に反映する。そのサイクルがとても速いと感じています」

宮下代表は、VWCをパートナーだと位置づけます。認知を広げるVWCの仕事と、商品やサービスを磨く自分たちの仕事は、片方だけでは成り立たないという考えです。

「こちらが商品やサービスを改善して、工夫をしているからこそ、VWCの認知拡大が生きる。共通の目標に向かって一緒にやるという感覚でずっとやっています。数字だけでは見えにくい情報も、フラットな関係で共有できています」

VWCをひと言で表すと、という問いへの答えは象徴的でした。

「親戚のお兄さん、お姉さんのような。近い距離のパートナーです」

これから挑みたいこと

宮下代表は、今の成果を通過点と見ています。次に見据えているのは、TikTokの育成です。

「前は炉端あんが気になって調べても何も出てこなかった。今はTikTokに動画が20本、30本と出てくるので、それを見て理解が深まる。自分たちがまだあまり投稿できていないTikTokの面も、インフルエンサーの方のおかげでカバーできている。資産になっている感覚があります」

一方で、日本で培った施策がベトナムのお客様に刺さるとは限らない、という難しさも率直に語ります。だからこそ、VWCへの期待は情報と企画にあります。

「日本人なので、日本人向けの企画は比較的イメージしやすいのですが、それがベトナム人に刺さるかは別です。ベトナム語で回っている他社の事例を教えてもらえるだけでも助かる。イベントも、どんな面白いことをやるか、これから一緒に考えていきたい」

どんな企業に薦めたいか

宮下代表が挙げたのは、かつての自分たちと重なる企業像です。マーケティングにこれまで力を入れてこなかった、あるいは力の入れ方が分からないという段階の会社です。

「自力でさまざまな施策を打っているけれど、思うように売上が作れていない、集客に課題がある。将来的には自社で内製化したいけれど、育て方や指示の出し方が分からない。そういう会社に合うと思います。ベトナムと日本のマーケットは違うので、先行して成果を出している事例があるのは安心材料になります」

もしVWCに依頼していなかったら、という問いには、率直な答えが返ってきました。

「今の売上はまず構築できていなかったと思います。。昨年対比は飲食店にとって重要な指標です。それが超えられないということは、弊社がマーケットの変化に追いつけていないということですから。あのタイミングで依頼してよかったと感じています」

編集後記

オーイズミフーズさんとのご縁は、私の前職時代にさかのぼります。当時は複数ブランドの広告支援を、日系媒体を中心にお手伝いしていました。日本人のお客様をどう集めるかが主戦場だった時代です。

そこから時代は移り、今回はウェブとベトナム人向けの集客という新しいテーマで、改めてご一緒するきっかけをいただきました。KOL施策を何度か試したものの手応えが得られない、というご相談だったことを覚えています。弊社が別途支援していた飲食店の成果をご覧いただき、お任せを決めてくださりました。

店舗移転や客層の変化という大きな動きに合わせて、施策を組み立ててきました。KOLは拡散の役割を担いますが、それだけでは一過性で終わります。検索結果の面を押さえ、情報の受け皿を育てたことで、新しいお客様の定着につながりました。この両輪で、日本人客中心からローカル客中心への転換をご支援できたと感じています。

これからは支援するSNSプラットフォームの幅を広げ、新しい客層の発掘を続けます。あわせて、これまで足を運んでくださったお客様にも変わらず炉端あんさんを選んでいただけるよう、マーケティング施策を一緒に積み上げていきたいと考えています。

宮下さん、この度はありがとうございました。

VWC代表 高林 凌

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Ryo Takabayashi

髙林凌(たかばやし りょう)。Vietnam Web Consulting / VWCジャパン創業者。早稲田大学商学部卒業後、楽天株式会社に入社。ECコンサルタントとして累計600社以上のEC事業成長を支援。2019年にベトナムのホーチミン市へ単身渡越。現地メディア事業の立ち上げを経て、2022年にVWCを創業。ベトナム進出日系企業の戦略設計から広告運用・SEO・SNSまで一気通貫で実行し、ワンストップで伴走支援する体制を構築。日本側の経営判断と現地実行現場の双方を理解した上で成果にコミットするスタイルに定評がある。