ベトナムでWeb集客を考える日系企業から、「日本でやっていたSEOをそのまま持ち込めばいいですよね」と聞かれることがあります。結論から言うと、そのまま持ち込むと外します。ベトナム人の検索行動は日本とかなり違うからです。
日本ではGoogleでの検索が中心ですが、ベトナムの検索はもっとばらけています。Google、AIアシスタント、TikTok、Facebook、Google Maps、Shopeeが、目的ごとに使い分けられています。ここを理解しないまま「Google対策とGoogle広告」だけに投資すると、実際の検索行動の半分以上を取りこぼします。
この記事では、ホーチミンで日々検索し、日系企業のSEOを支援している筆者が、ベトナム人が何でどう検索しているか、Cốc Cốcの正体、AI検索の台頭、そして信頼されるサイトの条件をお伝えします。数値は特記なき限り2026年6月時点のものです。

まず、ベトナム人がどこで検索を始めるかです。日本人の感覚と一番違うのが、この入口のばらけ方です。筆者(ホーチミンの会社員、20代後半)の場合、場面ごとにこう分かれます。
| 検索の目的 | 最初に開く場所 |
| 一般的な知識や疑問 | GoogleとAIアシスタント(ChatGPT、Gemini、Zaloのデジタル市民アシスタント)。2025年以降は知識系の質問の6割ほどを先にAIに聞く |
| 店やカフェ、場所探し | Google Maps(ほぼ100%)。レビューと写真、営業時間を見る |
| 買う商品を具体的に探す | TikTokとShopee、Lazadaを並行。TikTokでレビューを見て、Shopeeで価格と評価を見る |
| 信頼できる業者(歯科・修理・英会話) | Facebookグループと、Zaloで友人に聞く |
| ニュースや出来事 | Facebookのフィードとベトナムの新聞(VnExpress、Tuổi Trẻ) |
| やり方を調べる(料理・修理・Excel) | YouTubeとTikTok |
| 仕事、B2B、市場データ | Google(この場面はGoogleが9割以上で支配的) |
年代差もはっきりしています。Gen Z(16歳から24歳)は「何でもTikTokで検索」で、料理のレシピも投資の理由もTikTokから入り、Googleは確認用です。ミレニアル世代(25歳から39歳)はGoogleとTikTok、Mapsを混ぜて使います。Gen X以上(40歳以上)はGoogleとFacebookが中心です。
日系企業への意味は明確です。Web戦略が「Google対策とGoogle広告」だけなら、ベトナム人の実際の検索行動の5割から6割を外しています。TikTokのコンテンツ、Google Mapsのビジネス登録、Facebookグループでの存在感が欠かせません。

同じ「検索」でも、探すものによって使う場所が変わります。ここを分けて設計すると、投資先を絞れます。
店を探すときは、筆者はまずGoogle Mapsを開きます(9割以上)。3秒で見るのは星の数で、4.2から4.6が信頼できる「黄金帯」です。ただし注意があります。星4.8から5.0でもレビューが50件未満なら、逆に疑います(レビューの買い付けが横行しているため)。500件以上のレビューと、店ではなく実際の客が撮った写真があれば信頼します。かつて定番だったFoodyやRiviuは2022年以降かなり弱まり、今はほとんど使いません。Gen Zは先にTikTokで動画レビューを見て、Mapsは住所と営業時間の確認に使います。
商品を比較するときは、カテゴリで場所が変わります。ノートPCやスマホなどの電子機器は、Googleから専門店(Thế Giới Di Động、Điện Máy Xanh、FPT Shop)で価格と仕様を見て、YouTubeでレビューを見て、Shopeeで実際に買える価格を確認します。コスメはTikTokで実際の肌の上でのデモを見て、Shopeeで価格とベトナム語レビューを確認します。ファッションはTikTokとInstagramが中心で、Googleはほぼ使いません。健康食品のようなYMYL(お金や健康に関わる)分野では、Googleで複数の記事を読み、誰が書いたか、医師の監修があるかを確認します。

ベトナムSEOでよく誤解されるのがCốc Cốcです。日系企業から「Cốc Cốc専用のSEOは必要ですか」と聞かれますが、結論は不要です。理由を正確に押さえておきます。
Cốc Cốcは主にブラウザであって、検索エンジンではありません。Cốc Cốcのユーザーの多くは、ブラウザ内でGoogleの検索結果を使っています(Cốc CốcはGoogleの結果と自社の結果を混ぜて表示します)。BaiduやYandexと同じ独自検索エンジンだと考えるのは誤りで、Cốc Cốc専用のSEOというものは存在しません。Google向けのSEOをやれば十分です。
数字も押さえておきます。MAU(月間アクティブユーザー)は約3,070万人(2024年第3四半期)で、掲げていた2025年に5,000万人という目標には届いていません。PCブラウザではChromeに次ぐ2位、モバイルでは3位(約21%)です。検索では月6億クエリ超が使われています。採用理由は、動画のダウンロード、広告のブロック、ベトナム語の最適化、そして国産への支持です。意外なのは、PCでCốc Cốcを使う割合がGen Zで27%と、Gen X(20%)やミレニアル(22%)より高い点です。理由はTikTokやYouTubeの動画を透かしなしでダウンロードできることと、広告のブロックです。
SEO以外で押さえるべき点が2つあります。1つはCốc Cốc Adsで、CPMがGoogle広告より3割から5割安く、オーディエンスが35歳以上や地方に寄るため、不動産、銀行、伝統的なFMCGには検討価値があります。もう1つは注意点で、サイトにGoogle AdSenseを載せると、Cốc Cốcユーザーの45%から58%で自動的にブロックされます。表示広告の収益に依存しないサイト設計が必要です。

2025年から2026年にかけて、ベトナムのSEOで最も大きな変化がAI検索です。ここは日本以上に速く進んでいる実感があります。
前述のとおり、筆者は知識系の質問の6割ほどを、先にChatGPTやGemini、Zaloのデジタル市民アシスタントに聞くようになりました。とくに25歳から40歳の知識層で、この移行が進んでいます。従来の「Googleで10本の記事を開いて読む」行動が、「AIに聞いて答えをもらう」に置き換わりつつあります。
この変化は、SEOをAEO(Answer Engine Optimization、回答エンジン最適化)やGEO(Generative Engine Optimization、生成エンジン最適化)へと広げる必要があることを意味します。AIに引用されるコンテンツは、結論が明確で、FAQのように問いと答えが対になっており、一次情報や出典が示されているものです。日系企業のSEO戦略は、検索順位だけでなく、AIに答えとして拾われる形を意識する段階に入っています。

ベトナム人はオンライン詐欺に強い警戒心を持っています(銀行を装った偽サイトの被害が数多く報じられてきました)。そのため、サイトが信頼できるかを一瞬で判断します。筆者が3秒で見ている7つのシグナルを挙げます。
疑わしいときは、30秒で2つ調べます。Googleとフェイスブックで「ブランド名 詐欺(lừa đảo)」を検索し、次に「ブランド名 レビュー」でグループやフォーラムの評判を見ます。日系企業のサイトは、.com.vnの正規ドメイン、footerでのMSTと事業許可の表示、住所と電話の明示が信頼につながります。逆に、会社情報のない「今すぐ相談を申し込む」だけのLPは、詐欺サイトのように見えてしまいます。

ベトナム語では、肩書きや表現の選び方で信頼感が大きく変わります。日本と違い、学位や学歴の重みが今も強い点が特徴です。効く表現を、重い順に挙げます。
逆に、避けるべき表現もあります。「ベトナムNo.1」「最高」といった最上級は、証明がなければ広告法で禁じられており、読者も懐疑的に見ます。「100%効果を保証」「7日で治る」は、とくに医療や健康食品で禁止されています。「家伝の秘訣」「三代伝承」は詐欺のサインと見なされがちです。健康や金融、法律のYMYL記事では、著者情報(名前と写真と肩書き)、出典、更新日、免責の記載が必須で、欠けるとGoogleでも評価されず、読者にも飛ばされ、広告法75/2025/QH15(2026年1月1日施行)に抵触する恐れもあります。

最後に、日系企業が見落としがちな2点を短くお伝えします。
1つはモバイルの速度です。ベトナムの流入は9割以上がモバイルで、地域によっては通信網がまだ不安定です。グローバルの重いテンプレートをそのまま使った日系企業のサイトは、表示が遅く重くなりがちで、これは致命傷になります。PageSpeed Insightsのスコアが50を切ると、流入の半分を失うと考えてください。
もう1つはECモールのSEOです。ベトナムのB2C消費者は、ブランドの自社サイトではなくShopeeやLazada、TikTok Shopで買います。これらのモールは独自のアルゴリズム(評価、直近の購入数、店の返信速度、画像品質)を持っており、モール内のSEOが自社サイトのSEOと同じか、それ以上に重要です。B2Cで売る日系企業は、まずモールの商品ページ最適化から始めるほうが現実的です。

ここまでを踏まえた前提を整理します。ベトナムのSEOは、Googleの検索順位を上げる作業だけではありません。検索行動が、Google、AIアシスタント、TikTok、Maps、Facebook、ECモールに分かれているため、どこで見つけられるかを設計するのが出発点です。
具体的には、B2Cの消費財ならGoogle MapsとTikTokのコンテンツをSEOより先に投資し、B2Cのeコマースならモールの商品ページ最適化を先に、B2Bや専門サービスならGoogleのSEOとYouTubeの長尺で信頼を積むのが向いています。そのうえで、信頼シグナル(正規ドメイン、著者情報、MSTの表示)を整え、モバイル速度を確保し、AIに拾われる構造(明確な結論、FAQ、一次情報)を用意する。この順で考えると、日本のSEOの常識をそのまま持ち込むより、ずっとベトナムで機能します。
Q. ベトナムでCốc Cốc専用のSEOは必要ですか。
不要です。Cốc Cốcは主にブラウザで、多くのユーザーはその中でGoogleの結果を使っています。Google向けのSEOをやれば十分です。ただしCốc Cốc Adsは広告チャネルとして検討価値があります。
Q. ベトナムSEOは日本SEOと何が一番違いますか。
検索の入口がばらけている点です。日本はGoogle中心ですが、ベトナムはGoogle、AIアシスタント、TikTok、Google Maps、Facebook、ECモールを目的ごとに使い分けます。Googleだけに投資すると実際の検索行動の半分以上を外します。
Q. ベトナムでE-E-A-Tや著者情報は効きますか。
効きます。ベトナムは学位や資格、大病院などの権威に対する信頼が強く、著者名と写真、肩書き、監修表記、更新日の明示がGoogleの評価にも読者の信頼にも直結します。YMYL記事では必須です。
Q. ベトナム向けサイトで気をつける技術的な点は。
モバイル速度です。流入の9割以上がモバイルで、PageSpeed Insightsが50を切ると流入を大きく失います。グローバルの重いテンプレートをそのまま使わないことが重要です。
VWCでは、ベトナム市場に合わせたSEOの設計から、Google Maps、TikTok、ECモールを含むチャネル全体の集客支援までを、日本語とベトナム語で一気通貫に行っています。ベトナムでのWeb集客でお悩みなら、VWCにご相談ください。
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